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「成功者K」で、羽田圭介の2年間を追体験する

成功者K

成功者K



芥川賞を受賞したKは、いきなりTVに出まくり、寄ってくるファンや友人女性と次々性交する。突如人生が変わってしまったKの運命は?芥川賞作家の超話題作。


表紙に作者の顔が載っている小説なんて初めて見た。
内容を考えると必然性はあるんだけど、書店で手に取るのが少し恥ずかしかった。








この小説、テレビに出まくっている作者の姿を見ていないと楽しむことができない。
だけどテレビを見てこの人のキャラクターをある程度知った状態で読むと、とてもおもしろい。
芥川賞受賞を機にテレビに出まくって売れっ子タレントになり、多忙な日々を送り、
その合間を縫って自分にすり寄ってくるファンと次々とセックスをする(「成功」と「性交」がかかってるんだね)。



テレビ関係のエピソードは恐らくほとんどが本当なんだろう。
作者の視点から見たテレビ現場の裏側を知ることができておもしろかった。
女性に次々と手を出す展開は・・・・・・どうなんだろう?
言い寄ってくる女性はゼロではなかったんだろう。「私とセックスしてください!」と書かれた手紙なんて、実際のエピソードなんじゃないかと想像している。
で、実際に手は出したのかな?
もちろん、普通に考えればその部分はフィクションなんだろうけど、そう決めつけるのはつまらないし、妙にリアルな描写もあって、本当に体験したことなのかな、という思いが頭をよぎる。


ニット越しの豊かな胸のふくらみに顔をうずめたあと、マットレスから飛び出した紗友子の綺麗な脚の先、パンプスのつま先に、新大阪の高層ビルの明かりや室外機が見える。

富美那の弾力のある硬い腹や太ももを触っている最中、突然気づいた。
元モデルでフリー司会者の由利さんの肌が四十歳なのに吸い付くような気持ちよさなのは、あの人がジムやヨガに通い日焼けに気をつけているからではない。単純に、肌の張りが衰えているからだ。いくら余分な脂肪がなくしっかりとした筋肉を保っても、肌表面のコラーゲン繊維の衰えは防げない。肌が細胞レベルで衰えているから、あんなにも、他社の身体に吸い付いてくるのだ

このあたり、実際に見た風景や、自らの身体で実感したことを書いたんだろうか? と思わされた。
どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか。
ゲスな好奇心が止まらない。








もう一つの読みどころは、テレビで売れていく中で自分や周囲の態度がどう変わっていくのか、というところ。


芥川賞受賞以降のここ数ヶ月間で、人が生意気になるプロセスを知った。自分でぜんぶ判断してゆく限り、態度を大きくし優先順位を明確にさせていかないと、すべてをさばけないのだ。
たとえば新しくきた気乗りのしない仕事依頼に、日本人特有の、嫌われたくないあまりの婉曲な言い回しで断ってみても、相手はまだ可能性が残っているのかと食い下がってきたりする。それに対しメールで再度断りの返事をするという二度手間は、暇なときだったらこなせる。ただ同じような依頼が日に何件もくるような時期には、無理だ。

端から見たら調子に乗っている、と思うだろうけど、限られた時間内で仕事をこなすためのやむを得ない態度なんですね。
それから、芥川賞を受賞してから「当たりが強くなった」「笑わなくなった」と周囲に指摘されたことに対しての反応。


数年前からも笑わずつまらなさそうな顔をしていたり、時折当たりが強いときもあった自分の振るまいが、皆に認知されていなかっただけかもしれない。それまでは、いろいろと見逃されてきたのだ。(中略)成功を収めた途端、一挙手一投足に過剰に反応しだした

自分が変わらなくても、周囲の投げかける視線が変わり、「あの人は変わった」と断定されてしまう。





どこまでが本当なのかはわからないというのを前提においた上で、
売れない純文学作家から人気タレントへと「成功」していった、今まで見てきた羽田圭介のこの2年間を自分でも追体験してみるという、変わった読書体験になりました。