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別に銀シャリの完成度の高さを確認するためにM-1グランプリを見てるわけじゃないんだ

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今年のM-1グランプリ、見事銀シャリが優勝を成し遂げた。
例年以上にハイレベルの激戦をじっくりと堪能したけれど、釈然としない思いがずっと心の中でくすぶっている。




今のM-1グランプリは、過去のM-1と明らかに違う。
僕が好きだったM-1グランプリは、どうやらもう終わってしまったみたいだ。




今振り返れば、M-1最大の楽しみは「未知との遭遇」という点にあった。
名前も聞いたことのない、得体の知れないコンビが、今まで誰もやってないような斬新なネタを披露して見ているこちらの度肝を抜く。
そのコンビが高い評価を受けて、一気に売れっ子になって、M-1の歴史が更新されていく。
具体的には、07年に優勝したサンドウィッチマンや04年準優勝の南海キャンディーズがそうだった。
さらに特徴的だったのは、発想は新しくても技術が追い付いていないコンビにも高い評価を与えていたこと。
01年の麒麟や02年の笑い飯は、審査員も技術力がまだ身についていないことを指摘していた。
それでも麒麟は5位、笑い飯は3位と高い評価を得ている。
10年のスリムクラブも、決して上手さを感じるスタイルではないけれど、限りなく優勝に近い2位にまでのぼりつめた。




そういえば「麒麟枠」という言葉もあった。
M-1一年目に当時無名の麒麟が活躍し、その後笑い飯などが続いたことで生まれた言葉だ。




だから、誰が優勝するのか、という点と同じくらい、どんなコンビがM-1もしくはお笑い界に新しい風を吹かせてくれるのかという興味を抱きながら毎年番組を見るのを楽しみにしていた。
それがあるからこそ、M-1グランプリは他のお笑いの大会と違う、特別な魅力を持ったものであったように思う。





そして今年、カミナリがいわゆる「麒麟枠」として決勝に進出した。
どんなネタを見せてくれるのかと期待していたら、その期待以上のネタを披露してくれた。
僕はめちゃくちゃ笑ったし、会場も盛り上がっていたし、審査員もよく笑っているように見えた。
だけど点数は伸びなかった。
特に上沼恵美子の81点は衝撃的だった。
10年前のM-1だったら、ファイナルに進めないまでももっと高い評価を得ていたと思う。
こういう奴らが、M-1の「好物」だったはずなんだ。
そのカミナリに代わって上位に進出したのが、銀シャリ、和牛、スーパーマラドーナ
全員、2年連続の決勝進出で、正統派の漫才師。
実力はある。
そして、この三組は確かに面白かった(特にスーパーマラドーナの二本目は今日最も笑ったネタだった)。
だけど、実力があることはもう僕たちはよく知っている。
どんなネタをするのかも、だいたい知っている。
「未知」なことは、何一つない。




彼らのストレートが早いのは重々承知。
だけど豪速球も、そのうち慣れる。
M-1に求めているのは、見たこともないような曲がり方をするような変化球なんだ。
今日は一組だけ、未体験の魔球を投げたコンビがいた。
僕は思い切り空振りをしたけれど、プロの審査員たちは冷静に見送ってボールを選んだ。
特に上沼恵美子のバットはピクリとも動かなかった。
でも以前だったら、空振りするか、ハーフスイングする審査員もいたような気がする。




上沼恵美子の81点を見た瞬間、僕の中でM-1グランプリは特別な大会ではなくなった。
それが寂しい。